うずらまん「ぎょぎょ〜む日誌」

おはようからおやすみまでできるだけ楽しくと願う、うずらまんの日記。

マッド文句の夜

▼我がチビ賃貸マンションの一角にある我が家は駅から徒歩しか手段がないが、枚方市駅へも枚方公園駅へも15分ぐらいかかる。で、どっちも人通りが多いような道ではない。住宅街の自動車のすれ違いも難しいような道だ。
 さ、それで火曜の深夜…。もう日付も変わろうとするころ、ヒヨコは三番街シネマの『マッド・モンク』を観ての帰りのことである。駅からの道の中間地点あたりで、原付スクーターが対面から走ってきた。現場はくねくねと道が蛇行し、見通しの効きにくい場所。その原付は二十歳前後の男二人乗りで、ひとりはハンチング帽をかぶっていたという。
 原付によるひったくり事件とかが多いし、二人乗りでこの時間にこのような場所をとろとろと走っているのも妙だ。うずらヒヨコは、愛用の白と黒のツートンのショルダーをしっかりと抱えなおし、急ぎ足で自宅方向に向かう。二人乗りの原付はこの時、なぜか貸駐車場に入っていった。原付で貸駐車場…? ちょっと妙な行動でもある。気を引き締めて先を急いだ。
 しばらくして後ろの方から原付の近寄ってくる音がする。屏風のように横長の分譲マンションの前にさしかかった。身構え、いかなる事態にも対処できる体制をとる、うずらヒヨコ。しかし、原付はゆるゆると通りすぎていった。しかも一人乗りであった。
(なんや、さっきのヤツとちゃうのか…、ふぅ〜)
 と、思った瞬間であった。
 背後に青生臭い男の鼻息が聞こえたと思った刹那、男の腕が延びてきて、胸部に接触した。
 完全に油断した緊張が解けた一瞬の隙を突かれたので、うずらヒヨコは反撃できなかった。バランスを崩してマンションの垣根兼用の檜に倒れ込み、腕に負傷した。
 しかし、初動の反撃はむりでも、元オリエンテーリング部の駿足を活かして、追跡をしようとするが、少し先でまっていた原付に飛び乗り二人乗りで犯人は逃走した。やはりさっきの二人組の原付だったのだ。
 うずらヒヨコはドスの効いた低音骨太廣東女の怒声をあびせかける。が、それが精一杯であった。しかし、その声はエッチな気分も萎えなえにするほどの、エゲつない声だったという。
 今回、怪我も軽傷で大事には至らなかったが、犯人が刃物でも持っていたらどうなっていただろう…、と考えると背筋も凍る話である。
 近所では痴漢の出没などもあり、空き巣に入られた家もあるという。この静かな住宅街ものほほんとはしていられない寒い地域になりつつあるのだ。