▼昼下がり、会議。今日は歩いているとコートは不要だった。汗が出てきたのでコートを手に持って歩く。今日のは社内向け冊子の編集会議だ。4チームの編集委員がいて、季刊。つまり1チーム年一回担当。僕とデザインのKさんとI本さんの三人は年四回とも担当だ。今日のチームは初めて冊子を作るので、我々制作側からのお願い事項などを説明する。配る資料は準備していたが、特に喋る材料は用意していなかった。でも説明はすらすらと口をついて出てきた。なんとかなるものだ。
会議は途中から論理の迷路に入り込んでいき、僕の意識はその場所からどんどん遠くに離れていった。時間は予定より四〇分ほど延長し終了した。
おかげで、『女王の百年密室』第五回の再放送は聴けなかった。ヒヨコに頼んでいる録音が成功していること祈りたい。
電車に乗ろうとすると、ヒヨコからライトメール入電。
「いまどこねん?」
現在位置確認の連絡はたいがいこの文面で飛んでくる。これは子供がまだ日本語がおぼつかないころに言っていた口癖をまねた物がスタンダードギャグとしてわが家で固定蕁麻疹化したものだ。しかし、このメッセージの意味するところは時間帯やタイミングによって変わってくる。二〇時前後になると、晩御飯を先に食べておいていいかどうかの確認の意味になるし、もう少し早いとご飯の支度の加減や夕飯のメニューに影響する。また、もう少し早いと、買い物に出かけてきているので、どこかで落ち合おう、というような意味になるのだ。行間を読まねばならない(って行間ができるほど長くないけど)。
電車に乗ってから、
「守口」
と返事を返しておくがその後うんともすんとも言ってこない。僕の下車駅は二通りある。京都よりか大阪よりか。どちらで降りても自宅までの距離はあまり変わらない。片方の駅前にはデパートなどがあり、買い物に出ているとすれば、こちらの可能性が高い。だがもう一方の駅もコンビニが二軒、ちょっと離れた所にスーパーもあるので、こちらの可能性もなくはない。僕は今日は後者に賭けてみた。下車してから電話をしてみると、大当たりだった。歯磨き粉を買いに行くところだというのだ。ちょっと散歩も兼ねているのだろう。駅前で待っていると黒い革ジャケットを着て渋く決めたヒヨコが歩いてきた。