うずらまん「ぎょぎょ〜む日誌」

おはようからおやすみまでできるだけ楽しくと願う、うずらまんの日記。

廃墟の団地

▼朝六時に目が覚めた。ササッと洗顔と着替えを済ませる。家から歩いて五分ぐらいのところ。上の娘の通う小学校のすぐ近くだ。[大阪府營西枚方共同住宅]というのが正式名称。ここをぜひ記録しておきたかったからである。昨日も書いたが“營”のような旧字体が使われているところから察すると相当古い住宅だろう。鉄筋コンクリートの二階建てと四階建てである。
 まず外観をいろいろな角度から撮影。そして二階建ての方の階段を一つ上る。ドアはなんと木製であった。そうして石鹸箱二個分暗いのけっこう大きなのぞき窓が付いている。ここには各自工夫でミニ暖簾というかミニカーテンを付けて普段はふさいでいて、必要なときにめくって見るようにしている場合が多い。
(宗教・セールスの勧誘おことわり)
 と手書きでここに掲げている家もある。試しにドアノブを何軒か回してみたが、施錠されていて中には入れなかった。のぞき窓が開いている家もあったのでそれで見渡すとやはり2Kぐらいの広さのようだ。風呂はなさそうである。過去にはこの団地内に共同の浴場が設置されていたという。階段の踊り場には家具や色々な道具の残留物も多い。ここは狭かったからか普段からここにものはあふれ出していたが。
 四階の方も上ってみた。こちらの階段は暗い。二階建ての方は両方の面がスカンと開いていたがこっちは片方の面しか開いていない上、明かり取りが上下にほんの少しだけしか開いてないのだ。
 一軒のドアにメモが挟まれていた。
(●●さん、いいかげんにしてください。また夜来ます。××銀行)
 どうも借金の取り立てのようだ。日付はおとといになっていた。しかしもう●●さんは引っ越してしまった後である。
 一軒ののぞき窓が開いていた。中にちょうど見えるところに外人モデルのヌードパネルが立てかけてあった。まるで誰かがここをのぞきにやって来たときのサービスのように。
 四階まで上がったが屋上へは鍵がかかっていて出られなかった。屋上に続く踊り場には緑のカラーボックスと野球のバット、植木鉢と洗濯ばさみ、布団ばさみが残されていた。
 自転車置き場には何台か自転車が残されていた。そしてその近くのベンチの上に昨夜の黒猫がいた。人なつっこい鳴き声をあげて、近寄ってきた。この団地がなくなったら、黒猫はどこへ行くのだろう。なごりはつきなかったが、黒猫にさよならを言い、ボクはここを後にした。