うずらまん「ぎょぎょ〜む日誌」

おはようからおやすみまでできるだけ楽しくと願う、うずらまんの日記。

▼今日は客先での打ち合わせもないので、上着は着ないで出勤する。朝の京橋駅でのたのたと歩いている、妙にしわくちゃの夏物一重の生成のジャケットを着ている男がふと目に留まった。とてものたのたしていて人々の流れに乗っていない。思いっきりじゃまになっているのに本人は意に介さない様子だ。
 その男の右手に視線が自然と吸い寄せられた。中指に包帯が巻かれていて白く太くなっている。そしてほかの指を見ると人差し指と親指が短い。いや欠けているのだ。指先から一〜二関節分ないのだ。この人の人生と最近の生活というのはいったいどのようなものなのだろうか。とても気になる。
 指というとボクのおじのことを思い出す。母方の一番上のおじは、左手中指が指先から二関節、右手人差し指が一関節、同じく薬指が一関節分なかった。
 とはいえ、おじはその筋の人ではない。兄弟で町工場をしていた。自転車の変速機の部品なんかを小型のプレス機で型抜きしていくような小規模な工場だ。そこで昔のこと、安全装置なんて充分ではなかったので、機械に挟まれ三本の指を欠損してしまったという。あるべきものがないというものを見てどうしてもそれが飲み込めない小さい頃のボクは、とても不思議に思った。そしておじに遠慮なしにその指に関してずけずけと質問をあびせかけていた。そのいくつかの答えの中にとても印象に残っているおじの言葉がある。
「もう指なんてないのに、ときどきこの指の先がかゆくなるときがあるねん、おもろいやろ」
 そう言っておじは笑った。
 クライアントから電話あり。急な打ち合わせ入る。上着が着てない日に限ってこういうことになる。
 家に帰ってから昨日買ったMOドライブとハードディスクをセッティングする。