うずらまん「ぎょぎょ〜む日誌」

おはようからおやすみまでできるだけ楽しくと願う、うずらまんの日記。

渦宮アルヒの憂鬱

 
 
 
 
 
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▼家を出て数分は、海外の人にはただのノイジーなだけの代物である蝉の鳴き声にも朝の雰囲気というものを味わう日本人としての嗜みや、自宅最寄駅へのアプローチ上に咲いている花にそっと優しい眼差しを投げかける余裕すらあるのだが、それもやがては虚無的に強大で粘着質の8月下旬の懲りない暑さのせいで、クリスト・ヴラディミロフ・ヤバシェフの藝術のように台無しという圧倒的に大きな布にすっぽりと包まれてしまう。これはこの四方を海に囲まれた島国日本に暮らす我々にとっては決して逃げ出すことのできない閉じた迷路パズルのようなものだ。これこそどこぞの誰かがイライラの果てに生み出した閉鎖空間ではないのか、とか考えることすら困難なほど脳みそが早く人間になりたい溶解人間に変貌しつつ、つつ、なんとか職場にたどり着いた本日。ええいペットボトル症候群になっても構うものかとスポーツドリンクを一気に飲み干して、USB扇風機に当たりながらしばし7分37秒間ほどボーゼンとしてやっと正気を取り戻した。

 今週は火曜、水曜、木曜と三日連続出勤である。これでは身体を壊してしまう。いや確かに以前は誰が何と言おうと誰も何も言わなくても毎日会社に出勤するのが当たり前。そうやって稼いできた日々だった。それがコロナ騒ぎでイチコロ。人々はその少し前からあんまり本気度を感じなかった働き方改革に急に真剣に取り組み、リモートワークで仕事の大半がこなせることを証明してしまった。会社としては固定費、つまり建屋の費用、光熱費を減らせるチャンス。都会にこだわることもなくなり、コロナで業務が滞っているかと思いきや、けっこう経費節約などで収支が改善してるんじゃないの?と思える節もある。そんな中、在宅勤務に慣れ親しんですっかり身体がなまってなまってとろ〜りとろけそうになっているところを三日連続の出勤という窮地に陥れたのは一体どこのどいつだ?

 とかなんとか言いつつも一日の仕事を終えて退社する時間に、ふとなんとなく違和感を覚えた。このふとした感覚は一体どこから来るのか、それを言葉で説明するのは難しかったので、目の前から小蠅を邪険にするような手つきで追っ払ってしまった。ところが終業時間になって残業はするなと上司から絶対命令を受けているので仕方なく定時で帰宅するために臨戦態勢を取っていたのだが、いやそうしないと帰りの電車で座って帰れないとか余計な乗り換えが一度入るようになるという細かい事情もあるのだけど、ノートパソコンの電源を落とす際にアップデートのインストールを開始してしまってそれが完了するのを待っていると余分に時間が掛かってしまったのだ。会社を出るのが3分遅くなった。駅までの十数分の徒歩。その駅到着の目の前で乗るはずだった各駅停車の電車が高架の線路を出発していくのが見えた。がっくりと肩を落としてそれでも駅前の信号が青になったので幾分気を取り戻し渡り始めたら車道の信号の青の間に曲がりきれなかった右折の女を助手席に乗せてかっこつけたあんちゃんのクルマが無理矢理突っ込んできた。疲労困憊で足が重くて動作が緩慢になっていたから不幸中の幸いだったが、そのまま渡ってたら跳ねられてそのまままだ生暖かいアスファルトの上に血溜まりと共にそのまま横たわることになっていたぞ、確実にそのまま。

 
 
 
 
 
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 快速で早いが途中で乗り換えが発生する電車を一本見送り、十五分ぐらい待ってから次の各駅停車に乗り込んで、一駅我慢したらなんとか無事に座ることができた。電子書籍で読書を開始。それがことのほか面白く多少の疲れから来る眠気と闘いながらも、認知力40%ダウンぐらいで時々思考がぐるぐると渦を巻きつつも読書を続けた。面白さもあって夢中で読んでいたのだがハッと気が付くと降りるはずの駅を通り越し、扉上の流れるLED電光掲示には次の駅が表示されていた。急いで戻らないと。ただでさえ一本乗り逃して帰りが遅くなっているのに。

 
 
 
 
 
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 昔から事実は小説よりも奇なりと言うが、実際のところは小説の方が奇想天外なのは皆が承知の通りである。だって現実世界には未来から来た美少女先輩とか、読書好きで表情の変化が全く感じられない宇宙の高等生命体の情報端末のようなヒューマノイド型宇宙人とか5月という中途半端な時期に現れた謎の転校生超能力少年などというものは実際にはおいそれとは登場しないのである。それでもたまにはそんなことホントにあるのかと思うような、ちょっとしたコントみたいな出来事に出くわすことはないとは言えない。そう本日はそういう些細な事件を目撃した。
 二度の乗り換えを経て自宅最寄り駅で下車。今日は買い物もだるいのでパスして郵便局前のヒヨコの言うところの「地獄坂」を上ろうとしたときだ。郵便局前のボックス型のキャッシュディスペンサー、いわゆる金銭預け入れ引き出し機に男が約1名入っているのを見かけた。そしてその男は目的を終えたのか扉に手を掛けて開けようとした。ところが扉がガンッという鈍い音を立てて開かないのだ。ガンガンガン複数回把手を持って往復運動をしていたが開かない。腕時計で時間を確認すると夜の7時ジャスト。あ〜あ、男はCD機に完璧に閉じ込められてしまったのだ。もはや袋のネズミ。飛んで火に入る夏の虫である。少し用法が違う気もするがそんなことはこの際どうでもいい。で、どうしたかって? そんなことは知ったこっちゃない。面倒事に関わるのはゴメンだ。というわけで、そそくさと家路を急いだ。それはいくらなんでも冷たいだろうって? いやいや。CD機というものは中に必ずインターフォンが完備されている。助けを呼ぶ術がちゃんとあるのに何も好き好んで自分から関係を構築する必要はないのだ。男だったら自力で脱出すれば引田天功の100分の1くらいはスリルとサスペンスを味わうことができるだろう。そのチャンスを奪う権利はない。

 …というような七面倒臭い文章で日記を書くのも久しぶり。最近はなんだか寄る年波なのかあっさりした日記だったからな。いつもと全然違う作文も良いだろう。昔々はこんなテイストの文章も書いていたような気がする。けどそれはもう忘却の彼方である。———うず宮ある日の憂鬱。

 晩ご飯は豚しゃぶとレタス。ごまダレで食べた。あとはブナシメジのスープ。おいしかった〜。

 
 
 
 
 
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 食後、カラザとケロケロ号でベルパルレ国道1号線店のTSUTAYAに。いろいろまた借りた。そして隣のサーティワンアイスクリームへ。今日はレギュラーのシングルでイーブイのもふあまアイスにしておいた。これめっちゃ満足。