▼これは、うずらヒヨコが、バイト先で仕入れてきた話である。
ヒヨコと同じ部署のバイト仲間のKちゃんはの彼氏は双児だ。しかも双児で「なんでも屋」をやっている。
「なんでも屋」というと『必殺仕事人』シリーズで鮎川いづみがやっていた〔なんでも屋の加代〕とか、『俺たちの旅』のカースケたちのことを思い出すなぁ。自由で無責任でふらふらしているようだけど、どこかひたむきに生きているって感じがして、あこがれたものだ。
そして、この彼氏たちの「なんでも屋」の本日の仕事はなんとなんと、〔夜逃げ屋〕である。午後九時きっかりに依頼人の家に集合し、ものの一五分で家財道具の一切合切をトラック約二台に詰め込んで、安全且つ迅速に逃がすという任務なのだ。映画やドラマだけの世界ではないのだなぁ。ほんとうにあるねんなぁ。けどこういう仕事は彼等も初めてのようである。こういう仕事がいつか舞い込むといいな、と思っていたところ本当に来たということらしい。
仕事のことおろか、現場でも一切私語は禁止。緊張した中で無駄なく行動する。一瞬の油断や集中力が散漫になると、思わぬ歪みを生じそれが命取りとなるのだ。夜逃げするほうも必死なら、追い掛けるほうも必死だ。バレれば自分たちの生命すら危なくなるのだ。
